2014年6月10日火曜日

[説教要旨]2014/05/18「心をさわがせるな」ヨハネ14:1-14

復活節第5主日

ヨハネによる福音書 14:1-14 【新約 196ページ】

 おそらく普通の生活を送っている人ならば、戦争がしたいと思う人はいないだろう。しかし第二次世界大戦に向うナチス時代のドイツ空軍司令官であり、ヒットラーの後継者ともされた、ヘルマン・ゲーリングという人物は戦後に、次のように語っている。「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。(中略)しかし最終的には、政治を決めるのは国の指導者であって、(中略)国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。(中略)国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張するだけでよい。この方法はどんな国においても機能する。」70年前のドイツだけではなく、今、世界中で、私たちが生きているこの場でも、それはいつおこるかもしれない状況にある。
 本日の日課、ヨハネによる福音書の物語の中で、主イエスが家の中で弟子達に向かって、17章にいたるまで長い説教と祈りをはじめる最初の部分である。本日の少し前の13:30には、「夜であった」と書かれており、さらに18章では、夜の暗闇の中、松明を持った兵士達が主イエスを捕らえに来る様子が描かれる。いわば、家の外の夜の暗闇は、主イエスと弟子達に襲いかかろうとする世の闇の力として描かれ、今まさに主イエス様と弟子達は危険に晒されているといえる。けれども、そのような中で、主イエスはまず「互いに愛し合いなさい」語り、さらに本日の箇所では「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして、わたしをも信じなさい」と語られる。「心を騒がせるな」という呼びかけと「神を信じなさい」「わたしを信じなさい」という呼びかけが、一つになっているということは、すなわち、神とキリストを信頼し、その愛の絆に結ばれていることと、心を騒がせることなく生きることとは一つのことであると、主イエスは語りかけている。その意味で、神とキリストとの信頼の絆に結ばれることは、真の平静と平和へと向かうを生きる道を歩むことなのである。
 第二次世界大戦の前夜とも言うべき時代に、アメリカの牧師ラインホルト・ニーバーは「平和・平静の祈り」と呼ばれる祈りを用い始めた。「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。いっときに、一日だけを生き、いっときに、一瞬だけを喜ぶ。苦しみも平和へ続く道として受け入れ、イエスの如く、この罪深い世界をあるがままに理解して後悔せず、主の意志に身をゆだねれば、すべてをあるべき姿にしてくれると信じて。そして、現世では適度の幸福を、来世では、主と共に至高の幸福を感じることができるように。アーメン」
 いつの時代であっても、私たちを争いと憎しみに駆り立てようとする世の闇の力は、私たちの周りに迫ってくる。けれども聖書を通して語られる、私たちを愛と命の絆へと招く主イエスの言葉を聞き、主イエスを信頼する時、私たちには、真の平和を生きる道を歩むことができるのである。

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